立ち入り禁止区域
彩湖の中央に架かる幸魂大橋は、中央が東京外郭環状道路で、その両側に一般国道298号線を配する美しいアーチ橋です。この橋の向こう側、つまり彩湖の南半分は、完全立ち入り禁止区域となっています。


その理由は、動植物の生態系を守るビオ・トープとなっているからです。中でもここを訪れる鳥の種類の多さには驚かされます。それも「彩湖自然学習センター」で詳しく紹介されていますので、ここでは控えます。
私は都心からこんなに近くで、行政が自然を守ろうとしていることにちょっと感動を覚えました。
つまり、彩湖・道満グリーン・パークとは、治水と水資源の保全、それに公園としての顔の他に、こうして希少な荒川水系の動植物を守り育むと言う、尊くて大事な側面を持っているのです。
ここを訪れる方々にも是非この事を、ちょっとだけ知っておいて頂きたいと思うのです。そうすれば、少しはゴミの投げ捨てなども減るのではないかと期待するのですが。

自然がいっぱい
以前、この先はやはり立ち入り禁止区域でしたが、今回久々に訪れると柵は撤去されていました。
入っても良いということか… でも、なんとなく禁断の地みたいで、足を踏み入れるのが怖いほどの密林となっていました。

元々この通路は、湖に浮かぶ浮島の工事関係者の車両が通る道なので、万一入ってから注意されてもつまらないので止めときました。でも本当は、蛇が出そうで怖いから止めにしたんです。
傍らに、今が盛りと茂っているのはアザミの仲間でしょうか。彩湖周辺に咲く花々も、季節と供に移ろいで行きます。

ビオ・トープ
彩湖の北側、高架橋の上を走るのは、JR東の武蔵野線。左へ行けば朝霞台、右へ進めば西浦和です。

そして、線路の向こう側は、道満とは姉妹公園のさいたま市(旧浦和市)秋が瀬公園が広がっています。
注目していただきたいのが、手前に広がる緑の茂みです。実はこれもすべて、人の手で造られた湿地帯、ビオ・トープなのです。
現在は完全に水生植物が覆い尽くしているので見えませんが、あの下には、ゲンゴロウなどの水生昆虫や、どじょうなどの小魚が生息し、さらにそれを食べる小さな鳥たちのワンダーランドとなっているのです。
彩湖の周回道路沿いには、写真のような案内板がたくさん立ち並んでいます。ここで目にすることができる植物や鳥たち、それに水生動物などを紹介しています。

以前はもっとクッキリとした色でしたが、劣化して色あせてしまいましたね。
地方に住まわれている方々から見たら、この道満のような都会の自然というものは、なんて慎ましいのか!? はっきり言えばたいした物ではない、そうお感じになられるかもしれません。
しかし、本来日本の国土に於いて、完全無欠と呼べる自然界は少ないのです。日本中で人の手が全く付けられていない森(原生林)は、北上山地と知床、それに最上川周辺に屋久島の森、その四ヶ所に限られるそうです。
つまり、古来よりここ日本で自然と呼ばれている光景のそのほとんどは、実は人の手が入ることで人の暮らしと調和し育まれてきた、半ば人工の自然なのです。
その代表例が、里山と呼ばれる光景です。それでも人は、あれは人工の自然だから価値が無いと言うでしょうか? けしてそうではないはずです。いや、むしろ人が情熱を傾けて育て、慈しみ育んできたからこそ、よけいにその風景がいとおしくて、大切に思えるのではないでしょうか?
この道満の自然も同じだと思うのです。道端に咲く小さな花も、事情を知らない人から見たら、きっと取るに足らない存在かもしれません。ですが、そのささやかな自然を守るために、努力をし続けている人々がいると分かったなら、少しはその後の行動が変わってくるかもしれません。ゴミのポイ捨てなど、恥ずかしいことはできなくなるでしょう。
ここに自然を守るという、啓蒙の意義があると思うのです。
大都会の中のオアシス、ここ彩湖・道満の動植物たちが、それを教えてくれています。